【千葉魂】井口流スターのつくり方 ドラ1安田を4番起用

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10日の紅白戦でベンチのチームメートと笑顔でタッチするドラフト1位新人の安田=石垣

 独特のアプローチで新監督はスーパールーキーを育てようとしている。井口資仁新監督を迎えて始まったマリーンズの石垣島春季キャンプ。注目は3球団競合の末、獲得したドラフト1位・安田尚憲内野手に集まった。待ち構えていたマスコミのカメラが期待していたのは若き新監督が黄金ルーキーに技術指導をする姿。しかし、ここまでそのような光景は見られない。

 「当面は特に何も言わずに見ていようと思っている。どのような問題にぶつかり、悩み、そしてそれに対してどう考えて行動をするか。そういうアプローチも含めて観察をしたいし、知りたいからね」

 だから、キャンプ初日にプロのスピードや練習量に戸惑うルーキーを特に指導を行うことはしなかった。それは首脳陣全体にも徹底されていた。指揮官はただ、ずっと見ていた。一挙手一投足をカメラマンも追っていたが、それ以上に鋭い視線と独特の視点で観察を繰り返していた。高校時代の足を上げる打法からすり足に変えて挑んだキャンプ。しかし、あっさりと4日目にはかかとから足をすっと上げてタイミングを取るようになっていた。指揮官は高校を卒業したばかりの新人がわずか数日でタイミングの取り方に修正を加えたことを注視した。技術、肉体は当たり前のように必要なこの世界にあって超一流になるためにはもう一つ必要とされる思考力における可能性を感じ取った。

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 マリーンズを背負って立つ存在になる逸材。キャンプ序盤でそれを感じ取ると10日の紅白戦を前にコーチ陣に安田の打順を問い掛けた。全員一致。即決で「4番サード」と決まった。新生マリーンズの首脳陣が全員、その素材にほれ込んでいたことに気持ちが高揚した。

 「マリーンズファンも期待をしている。それにふさわしいデビューを飾らせてあげたかった。4番と聞いてオドオドするのか、ヨッシャーと思うのか。意識の部分も楽しみにしていたけど、自然体だった。打席で自分のスイングをしていた。きょうはチームで一番存在感があったんじゃないかな。自然体だし対応力、柔軟性もある。日に日にタイミングが取れてきているよね。自分を持っていて頼もしい」

 並み居る先輩選手たちの中でしっかりと声を張り上げ、打っては2安打。守っても無難に守備機会をこなす姿はもはや高校生離れしていた。クールな指揮官が珍しく冗舌に絶賛を繰り返した。

 今はまだ観察の時だが、いずれは指導を行う日は来るだろう。ただ現時点では自分で考え悩み決断することが野球人として成長させると捉えている。だからあえて細かくは言わない。もちろん策は講じている。昨年までキャプテンを務めた鈴木大地内野手と同じ練習の組にあえて入れた。キャンプ期間中、チームに欠かせないレギュラー選手である背番号「7」と一緒に練習をすることでいろいろなことを肌で感じ取ってほしいとの思惑からだ。

 「レギュラーを張っている模範のような選手というものがどういうものかを感じて、それを目標にしてほしいという思いから。キャンプでは意図的に一緒に練習をさせている」

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 そんな独特の井口流の選手育成を行っている中で、実はキャンプ初日に一つだけアドバイスしたことがあった。同じように若かりし頃、ホークス期待の黄金ルーキーとして注目を集めていた。時にはテレビカメラが億劫(おっくう)となったり、練習後に群がる新聞記者に神経過敏になったこともあった。ただ、それは違うと伝えた。「これだけ注目が集まるのは幸せなことだ。取材をしてほしくても取材をしてくれない人はたくさんいる」。多くの人に見られ、その注目や期待に応えるのがプロ。視線が集まれば集まるほど力を発揮できる選手になってほしいと願いを込めて伝えた。

 「これからのマリーンズを背負ってもらわないといけないからね」

 スーパールーキーは最高の出会いに恵まれたのかもしれない。若き指揮官はしっかりとした育成プランのもと、マリーンズの看板を背負い、将来的には日本を代表する選手を作り上げようとしている。無限に広がる可能性と夢が広がっている。

(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)